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黄昏ミニヨン想録堂

"Kennst du das Land, wo die Zitronen blühn" 想いし事を録取する書堂

名前:
場所: 遠江, 静岡, Japan

何時の何処にでも居る勘違い頭でっかち

10/13/2006

秋日

 アリスSOSのOPを見ながら、自分は全くベクトルが変わってない事に気付く。Guten Abend,理です。影でゴスロリなアリスダンスが素敵。

 さて、今回もまた、銀雨ことシルバーレインの話、と言うか小説。そろそろ手が錆びれて来たか、と思い、同結社のお友達・白玖蛍嬢を借りまして、「秋の日の放課後」をテーマに一つ書いてみました。いやぁ、ほんの少しちょろっと書くつもりが、何かだらだらと長くなっちゃいましたが、気にせず晒し。

 キーン、コーン、カーン、コーン

 赤とも紫とも形容出来る空の下に、放課を告げる鐘の音が響いた。
 それを合図とする様に、私立銀誓館学園の学び舎から、ゾロゾロと生徒達が出始める。
 小・中・高に、大学まで抱えるこの学園の生徒数は裕に一万人を超えており、一群となって帰宅、或いは放課後の活動の場へと進んで行く光景はまさに圧巻である。

 それとは対照的なのが、校舎裏である。
 普段からまともに乃至まともな人は来ないだろうこの場所は、こと放課後に居たっては、不気味な程の静寂に包まれた無人地帯と化す。

 カチ

 そんな場所で、

「……すぅ~~……。」

 塩森暁徒は独り、一服していた。
 
 その格好は、黒一色である。
 本来は白いシャツである筈の高等部の夏用制服は黒く染められ、ズボンもまた黒だ。
 他の配色としては、インナーに着た紫のTシャツに、鼻先に乗せた紅い丸眼鏡で、全体としては黒で纏まっている。髪の毛も、目の色も、おまけに吸っている煙草の色も、だ。

 ブラックデビル。
 紅い丸の中に、黒い小悪魔が哂っている姿が描かれた箱が特徴のその煙草は、名前や見た目とは裏腹に、ココナッツミルク系のフレーバーで、さらにフィルターがお菓子の様に甘いと言う代物だ。

 しかしながら、それはお菓子では無い。
 どんなに甘かろうと、列記とした煙草である。
 アクセサリー、私服の着用及び制服の改造を自由化する所か、寧ろ推奨している節のある当学園においても、未成年の喫煙は犯罪であり、校則において禁止されている。

 当然ながら、見つかればただでは済まないだろうがしかし、暁徒は吸っている。
 気にしていない訳では無い。
 無ければ、そもそもこんな所でこそこそと吸いはしないだろう。

 気付けば、既に一本を灰と成し、二本目を取り出していた。
 それを口先に咥えつつ、暁徒はにやりと苦笑いを浮かべた。
「解っちゃいるけど、」
 止められない、そう口にしようとした時、

「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 悲鳴にも似た甲高い叫びが木霊した。

「ぁ?」
 暁徒は紅い丸眼鏡ごしに叫びの方へと視線を動かした。
 緩慢とも言える動きは、叫びが明らかに自らと同年代か、それ以下の女子であったからだ。少なくとも、教師の類で無い事は明白である。

 視線の先。そこに居たのは、銀髪の少女だ。
 肩程の長さにカットされ、ふわりとウェーブがかった上で、左右をリボンで纏めた髪。サファイアの様に、美しく透き通った青い瞳。総じて整った顔立ちは、使い古された修辞ではあるが、何処か遠い異国からやってきた深窓のお嬢様、と言う所である。

 が彼女がそんなご大層な存在で無い事を、暁徒は知っていた。
 同じ結社の知り合いだ。名前はそう、

「何だい大福。何でこんな所に「白玖蛍だようっ!!!!」

 叫びを通り越して、衝撃となったものが、暁徒の鼓膜と周囲のものを揺り動かした。

「……ったく、何て声を出すんだあんたは。」
 まだ音が聞こえると耳を押さえながら、暁徒は苦々しげに二本目の煙草に火をつけた。
「大福なんて呼ぶからだようっ。」
 その傍らで、頬を膨らませた蛍はぷすりと、イチゴオレのパッケージにストローを差し込んだ。
 機嫌直しに、近くの自販機で暁徒が奢ったものである。何でも、大好物なそうだ。
 因みに、『大福』とは彼女をして、その友人達が似ていると付けた呼び名である。白くて丸いものを比喩して、だそうだが、ある意味においては実に失礼な呼び名である。

「…………。」
「…………。」
 そして会話の切欠けを逸したのか、沈黙が流れた。
 聞こえて来るるのは、蛍のちゅーちゅーとストローを吸う音と、遠雷の如く聞こえてくる自動車の音や、部活動に励む生徒達の声のみだ。
 二人はコンクリート製の壁に背を凭れさせながら、ただ黙って座っている。
 暁徒の咥えたブラックデビルは、吸われる事無く灰と成り、棚引く白い煙となって、秋の空へ、空へと登って行く。

「で、何であんたがこんな所にいるんだい?」
 暫くして、最初に口を開いたのは暁徒の方だった。
 とんとん、と煙草の先端よりぶら下った灰を叩き落しつつ、目だけを蛍の方へと向けて問う。
「え~~っと、何と無く?だよう。」
「……そうかい。」
 考えた末に笑顔で帰ってきた答えに、一気に脱力。
「それより暁徒君こそ、煙草吸うなんて悪い子なんだよっ。」
 今度の問いは、蛍から出た。
 めっ、と口を尖らせた姿は本気で言っているものではあるまい。
 注意はしてるものの、どうしようと別にいいのだろう。
 仮に先生に密告する気ならば、イチゴオレで脅してしまえ。
 そう思いながら、暁徒は咥えた煙草を揺らした。
「いいんだよ、別に。英国王宮じゃ頭痛止める薬としてな、」
「そんな事言ってると、依空君に嫌われちゃうんだよう。」
 思わず、煙草を噴出していた。
 目だけで無く、顔も向けてみれば、先程と変わらぬ、笑顔の蛍の姿があった。
 ただ、その笑顔は、あのパッケージに描かれた黒い小悪魔が浮かべたそれと、何処となく似ているものであったが。

 気を取り直す為に、暁徒は落ちた煙草を口に咥え直す。
 ふぅと一吸し終えた後、はぁと一吐き。
 丸ぁるい眼を興味津々に見開く蛍の視線と合わない様に、遠くを見つめながら、彼はこう応えた。
「あいつは煙草別にいいってさ。寧ろ格好良い見たいな風に言ってくれたさ。」
 言った後で、何故蛍にこんな事を言うのか、と少し後悔。
 照れ隠しに軽く頬を掻きながら、暁徒は蛍の方を見た。
 頬を染めて、さらに眼を見開いた蛍がそこに居た。
 しまった、と盛大に後悔する間も無く、
「はぅ~~……らぶいんだようっ!!!!」
 蛍は妙な奇声を上げながら、みょんみょんと飛び跳ね出した。

「いやいや、何でそう、「らぶ~~っ!!!!」

「いやだから、別にそれ「らぶ~~っ!!!!」

「人の話を聞けと親御さ「らぶ~~っ!!!!」

「いい加減にしとけよ。「らぶひゃっ!!??」

 奇怪な上下運動は、暁徒の両手が、蛍の両頬をみょぉんと引き伸ばした事で漸く止まった。

「ふゃ……ふぉふぇんふぁふぁい。」
 意訳:ごめんなさい。
「……解りゃいいんだ、解りゃ。」
 正に大福と形容するに相応しく、柔らかげに伸びた蛍の頬をぱんと離しながら、暁徒はやれやれ調子が狂うと溜息を一つ上げた。
 一方の蛍は、薄らと青い瞳に涙を浮かべながら、赤く染まった頬を撫でながら、でも、と告げた。
「らぶはいいんだよう、らぶはっ。」
 それは屈託の無い笑顔と共に。
 本来ならここで皮肉の一つでも言うだろう暁徒であったが沈み行く夕日に照らされていた為だろう、
「あー……そうかい。」
 一言、それだけを言うに留めてそっぽを向いた。
 ほんの少しばかり、頬に熱さを感じる。
 横で笑う蛍が見ているか、とも思ったがきっとあの夕日に隠れて大丈夫だろう、と言い聞かせた。

「と、蛍はそろそろ帰るんだよう。」
 そう言われて気が付けば、太陽は既に頭の先程度しか出ていなかった。
 眩しかった夕日は、今日一日の意地であったのだろう。
 もう数分も過ぎれば、一つの月と数億の星々の時間となる。
「あぁ、そうだな。気ぃ付けて帰れよ。」
 その言葉に蛍は微笑み、
「大丈夫だよう、澪君が送ってくれるからっ。」
 どっちがらぶだよと暁徒は苦笑。
「それなら尚更気をつけなくちゃな、特に狼にゃ。」
 聞く人が聞けば下ネタとも取れる皮肉げな言葉だったが、蛍はただ、う?と首をかしげ、
「解ったんだよう。それじゃ、暁徒君も気をつけてねー。」
 ろくに挨拶も聞かずに、だっと正門の方へと駆け出して行った。
 やれやれ、と暁徒は丸眼鏡をくいっと上げながら、その背中を目で追った。
 風の様に走り去って行く後姿は速く、あっと言う間に校舎の影に見えなくなった。

「それじゃ、ま、俺も帰るかね。」
 飛ぶ鳥後を濁さないのが男の嗜み。
 吸殻を携帯用の灰皿に押し込むと、暁徒は蛍とは別の方向へと歩いて行く。
 その最中で、はたと脚が止まった。

「……結局、何であいつこんな所に居たんだ?」

 はぐらかされた答えに対する問いに、しかし応えるものは誰も居らず。
 ただ、七つ子を求めて去って行く鴉の羽音と鳴声のみが、響くのみであった。


 晒す前にとりあえず本人に読んで頂きましたが、喜んでくれたのが幸いでした。腕は、一応は保ててる様です。

 で、調子に乗って今度は同じく結社団員の朝加伊織嬢を借りて書いてみようかと計画中。今度はもっとさらりと書こう、さらりと。

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